GDSとは
いきなり、聞きなれない航空業界用語ですが、GDSは航空業界だけでなく、旅行業界になくてはならない存在。GDSはGlobal Distribution Systemと呼ばれる航空会社、ホテル、ツアーなどの予約を管理するシステムのこと。世界中の旅行業界関係企業が接続されている一大システム。GDSは複数社が提供していて、それぞれの航空会社は基幹の予約システムをどこかのGDSを使用して管理している。
GDSを知ると何がいいの?
GDSを知ると、今持っている航空券の予約の確認する手段が増えます!! 知らなくて十分なのですが、知っていれば、友人にお願いした航空券の予約を自分で確認して、eチケット控えを印刷したりということが自由にできるようになるかも。
GDSの歴史
航空需要の増大とともに、予約管理業務の効率化という点で、アメリカン航空がIBMと共同でSABREを開発した。その後、70年代、80年代にGalileo、Amadeus、Travelport、Apollo等様々なシステムが開発され、21世紀に入り、大手に集約されていく。
航空会社のアライアンス化の進展とともに、パートナー企業と異なるシステムを使用していることがデメリットになるため、統一されていくことになった。その中で、Amadeusが多くのアライアンスから支持を受け、業界の1強になった。
もともとはCRS(Computer Reservations System)と呼びコンピューターでの予約管理だけだったものが、ホテルなど旅行全体の管理ができるようなシステムに代わるにつれ、GDSと呼ばれるようになっていった。
ちなみに、鉄道の予約管理システムとしては、JR各社が国鉄時代から使っているMARS(マルス)の有名ですね!!
現在の主なGDS
航空業界ではAmadeus、SABRE、TravelportなどのGDSを通じて航空座席の管理している。全く違う航空会社なのに、同じような予約画面ということがないだろうか。それが同じシステムを使用しているという証でもある。
業界としては、1強(Amadeus)1弱(SABRE)、その他という状態。その他の中には、中国系エアラインが使っているTravelsky、ANA傘下のINFINI、JAL傘下のAXESSがある。(AXESSは2021年廃業予定。)
日系2社のGDS
ANA
もともとは自社開発のシステムを利用していたが、所属しているスターアライアンスに合わせて、2015年にAmadeusに移行した。この時、移行したのは国際線のみで、今でも国内線はableという元のシステムを使用したままである。国内線は国際線に比べ、システムの変更が少なく、連携する国内他社もableを使用しているため、移行せず使い続けることにしたのであろう。
この他にANAは国内の旅行会社向けにINFINIという予約システムを提供している。INFINIは日本の旅行会社で最も支持されているシステムで、旅行会社で飛行機を予約したことのある人なら、一度はこのeチケット控えを見たことがあるかもしれない。INFINIはSABREの代理店も兼ねている。
JAL
JALも同じく自社開発のAXESSというシステムで航空券の予約管理をしていた。JALはANAに遅れること2年、2017年に所属するワンワールド各社の過半が使用しているAmadeusに移行した。ANAとは異なり、JALは国内線国際線ともにAmadeusに移行し、自社のシステムを使用しなくなった。
自社開発のAXESSは引き続き、国内の旅行会社向けの充実したサービスから存続としていたが、突然2019年に2021年での廃業を発表した。生き残りのために海外のGDS、トラベルポートとの提携強化などの策を進めていたものの、AXCESSを取り巻く環境は改善せず、廃業を選択した。今後は旅行会社もAmadeusを推奨する方針に変更する。
自社のシステムを使う内製化により、一見融通が利くような気がするが、その分維持のための固定費が大きくかかる。GDSでは予約に応じて利用料が発生するため、変動費となることもメリットなのだろう。
GDS別利用航空会社
主なGDSの主な利用航空会社を記載してみた。自分が予約画面まで行き、実際に確認したものを中心に記載しています。同じGDSを利用していると、予約画面も同じようなものが出てくるという感じです。(日系の2社は独自の画面開発をしているようですが。)
Amadeusを利用する主な航空会社
- AF エールフランス
- AY フィンエアー
- BA ブリティッシュエアウェイズ
- BR エバー航空
- CI チャイナエアライン
- CX キャセイパシフィック航空
- GA ガルーダインドネシア航空
- JL 日本航空
- LH ルフトハンザドイツ航空
- LX スイス国際航空
- MH マレーシア航空
- NH ANA
- OS オーストリア航空
- OZ アシアナ航空
- QF カンタス航空
- QR カタール航空
- RB ロイヤルブルネイ航空
- SA 南アフリカ航空
- SQ シンガポール航空
- TG タイ国際航空
- TP TAPポルトガル航空
SABREを利用する主な航空会社
- AA アメリカン航空
- AM アエロメヒコ
- AS アラスカ航空
- AZ アリタリア航空
- ET エチオピア航空
- NZ ニュージーランド航空
- SU アエロフロートロシア航空
- VN ベトナム航空
- WY オマーンエア
トラベルスカイを利用する主な航空会社
- CA 中国国際航空
- CZ 中国南方航空
- FM 上海航空
- HU 海南航空
- MU 中国東方航空
独自のシステムを使う航空会社
- DL デルタ航空
- UA ユナイテッド航空
こうやって見ると如何にAmadeusが巨大勢力になっているのかがよくわかりますね。このほか、格安航空会社は他社のシステムとつながる必要がなく、運賃体系も簡素なので、マイナーなシステムを利用していることが多いです。
GDSの将来
岐路に立つGDS
従来であれば、乗客と航空会社をつなぐ役割をしていた旅行会社が、航空券予約ということにおいては、インターネットの普及により、不要になってきている。GDSは旅行会社での航空券の手配という場面において、その基盤となるシステムを構築して成長してきたが、ここでその存在が薄れてきているということだ。
実際に、自分で航空会社のホームページから航空券を予約する人の割合が増えてきた。航空会社から見ると、直販であれば、旅行会社経由の販売による旅行会社への手数料の負担がないため、利益を最大化できこともあり、積極的に増やしていきたいと考えている。
そこで、航空会社はNDC(New Distribution Capability)という新しい販売システムを導入しようと躍起になっている。
新しい予約の仕組み? NDC
GDS経由の予約では航空会社は顧客の詳細を知り、顧客に情報を提供することが難しかった。NDCはそれを改善し、直接顧客にサービスの紹介して、顧客の登場体験を充足させようというものである。
例えば、顧客の年齢・志向などに合わせて、有料ラウンジ利用の案内やアップグレードの案内をするものである。従来はホームページから予約した一部の顧客にしかできなかったことをもっと広めようというものである。写真とともに見れば、体験してみたいと感じることはきっとあるでしょう。
しかし、航空会社の持っている顧客情報はまだまだ小さく、航空会社間でのシステムの連携などは十分ではなく、寧ろそれぞれの航空会社で利便性などの点から差別化をしている現状もある。また、ツアーのように飛行機、ホテル、食事、観光がワンセットになっている旅行を希望する層もまだまだある。そのような層に直接販売していくのは困難だ。
結局のところ、NDCでは旅行会社にNDCのシステムを通じて販売してもらい、そのシステムを通じて、航空会社が乗客に直接オプションを販売するシステムという状態になっている。そのNDCのシステムを構築しているのが従来のGDSであったりすることもある。結局GDSに機能追加をしているような状態であり、航空会社の完全直販への道は遠い。
これからの予約
航空会社は景気の変動に弱く、新型コロナのような一気に需要が減る局面になると、すぐに経営が苦しくなる。その点でも、航空会社のコストの削減への模索は続く。
GDSは航空会社の予約管理システムとしては存在感を増す一方販売システムとしてのGDSは徐々に小さくなっていくかもしれない。乗客の利便性が増すのであれば、どんなシステムでもいいので、充実することが期待される。