懐かしのJAL時刻表を見ながらJALの路線網の変遷を見ていきます。今回は国際線時刻表を見てみます。
その1はこちら。
JALの栄華と経営破綻、そこからの復興
国際線は国内線に比べ、景気や経営状態の影響を受けやすい。JALはこの20年でJASと統合、経営破綻、そこからの再生と大きく経営環境が変化してきました。
その点を国際線時刻表は如実に表現している。その点にも留意しながら時刻表を紐解いてみたいと思います♪
JALの盛期の時刻表
2000年代中盤まではまだまだ国際線といえばJALという状況が続いていた時代だ。実際にこの頃のJAL航空収入の半分以上を国際線が占めていました。それを象徴するかのように、この頃のJALの国際線時刻表はA5の大判です。
2002年の時刻表をメインに見て行きましょう。
国際線接続便
この頃は国際線接続便として、国内線ながら国際線扱いする便が存在しました。この便は出入国を成田ではなく名古屋で行うため、成田に到着した時にはすでに国際線ターミナル内にいるため、成田の混雑を避けられるため非常に便利でした。
北米便
時刻表を見ると、北米便のすべてがボーイング747です。この頃はボーイング747が国際線の花形であり、主力機でした。
ハワイ便のページを見ると、地方空港からハワイへの便が充実しています。
今では東京大阪名古屋の4空港からしかJALのハワイ便はないですが、この当時はそれに加えて、札幌、仙台、広島、福岡からの便もありました。
実際に2006年にはすでに3空港からに絞られています。
オセアニア便
今では成田グアムを毎日1便となってしまったオセアニア便もこの頃は東京大阪名古屋の3空港からグアムへ、そして東京大阪からはサイパン便も運航していました。
因みに、3年後の2006年の夏の時刻表ではリゾート路線は一気に減っています。
この他このページでは、
- パペーテ行きのコードシェアの運航会社がエールフランス航空になっている(現在はエアタヒチヌイ)
- ニュージーランド航空とコードシェアをしている(現在のコードシェア相手はANA)
- ブリスベンとシドニーへともにボーイング747で運航している
というところが目につきますね。
欧州便
欧州便も欧米便と同じくボーイング747で運航されています。この頃のJALは欧州便が充実しており、主要空港であるロンドン、パリ、フランクフルトに加えて、アムステルダム、チューリッヒ、ローマ、ミラノ、モスクワへも就航していました。
この時はモスクワはローマ便の経由地としてでしたが、この後、モスクワ便は独立して、経営破綻を生き抜きますが、ローマ便は不採算として運休します。
ここで、アムステルダム便だけがボーイング747ではなく、MD11ですね。因みに、2005年の時刻表ではボーイング747に昇格しています。同時に、モスクワ便が独立し、チューリッヒ便が週3便へ減便していますね。
アジア便
アジアの近距離便でもボーイング747が目立ちます。
この時は福岡から香港の便が鹿児島や那覇を経由していて、地方空港からの国際線もいろいろあったことがわかりますね。
バンコク便はリゾート路線扱いされ、JALウェイズでの運航便もありますね。コードシェアはベトナム航空とタイ国際航空の2社が見られますが、これも現在ではANAとのコードシェアに変わっていますね。
因みに、ハノイ便は新規開設したばかりのようです。今ではベトナムは需要が豊富な行先でしたが、この当時はまだ、認知度が低かったのでしょうね。
関空からの便は三角運航や経由便という扱いで運航しているようですね。シンガポールとクアラルンプール間をJALで移動することができたようですね。
東アジア便
韓国便ではソウル便が地方空港からの就航が実現している。小松、広島、福岡からソウルへ便がありますね。中国便は行先に直行便の記載しかないですね。
中国便はこの後の時刻表で拡大していき、経営破綻で縮小して、今に至ります。
- 2002年夏 北京、上海、大連、天津、青島、厦門 週67便
- 2005年夏 北京、上海、大連、天津、青島、厦門、広州、杭州、西安 週123便
- 2010年冬 北京、上海、大連、天津、広州 週91便
- 現在 北京、上海、大連、天津、広州 週98便
拡大していく中で、中国東方航空と提携し、コードシェア便により、路線網の拡大を図っていきます。2006年には中国・韓国路線のページ数が増えています。
最後は日本アジア航空が運航する台湾路線。
この当時は高雄便は直行ではなく経由だったみたいですね。2006年夏の時刻表で直行便になります。
サービス案内
2002年版では意外とサービス案内の内容は薄くて、JALマイレージバンクの説明もないです。それに対して、2005年版ではその点が充実します。まずは、割引運賃のJAL悟空の案内。
ファーストクラスの案内。この当時から機内インターネットがあったのですね。
ビジネスクラスのことは当時エグゼクティブクラスと呼ばれていました。シェルフラットのシートが時代を感じさせますね。
エコノミークラスの案内は1ページだけです。画面が小さいのが目につきますね。
FLY ONプログラムの案内もあります。ステータスカードのイメージがないとちょっと殺風景ですね。
最後には空港案内も充実しています。
JALのホテルブランドである日航ホテルの一覧まであります。今では売却されてJALとの関係は薄くなりましたが、ブランドは残っていますね。
経営破綻後の路線縮小
2007年から2009年の間で国際線時刻表が小型化します。そして、JALは2010年1月に会社更生法を適用させ、経営破綻しました。その経営破綻直前に発行された2009年冬ダイヤの時刻表を見ると、多くの運休が記載されています。
まだこの時の時刻表にはボーイング747が多数記載されています。香港便でもボーイング747が投入され、ファーストクラスの設定があったのですね。
シートマップも残っていますね。
国際線接続便の存在もこの時刻表(あるいはその次)が最後になったと思われます。
その年の秋、2010年の冬ダイヤでは羽田空港の国際線の発着枠の配分が行われて、羽田空港の国際線の強化が本格的に進んでいくことになりました。この時刻表はJAL再生のスタートとなる時刻表とも言え、不採算と判断された路線がすべて消えています。さらには、数年前に小型化したばかりなのに加え、不要なページが削減され、ページ数が減っています。
そして、この時刻表が、数年前までたくさんあったボーイング747の記載されている最後の時刻表となりました。
写真になっているビジネスクラスの座席はフラットにもならない座席で、経営再建中にハード面では完全に置いて行かれました。
余談ですが、この国際線時刻表にある中部国際空港の時刻表を見ると経営破綻を契機に一気に路線が減っているのがわかります。札幌、成田、那覇の3路線に集約されてしまいます。
鶴丸のJAL
鶴丸のロゴに戻ったJALは2012年には再上場を果たします。その後、JALは会社更生法の適用に伴う法人税の減免措置があったことにより、路線の拡大には制約が伴いました。特に、羽田の国際線の日本側の枠の配分はANA優先ということになり、JALはドル箱となる羽田路線を多く確保できませんでした。
2002年の時刻表と比べると圧倒的に増えているのがコードシェア便の数です。当初は乗り継ぎ便の時刻表まで記載されていたものが増えるにつれ、行先の表示だけとなり、2019年の時刻表には行先の表示すらなくなります。
因みに、最新の2020年の時刻表には、「最新のスケジュールはWebサイトにてご確認ください。」の文言が追加されています。この時刻表事態幻であり、実際に運航していない便ばかりであることは間違いないです。
コードシェア便の拡充により、地方空港からの国際線が格段と増えました。JALの国際線は成田羽田関西中部の4空港に限られますが、提携航空会社のコードシェア便が多くの地方空港からの便を運航しています。
地方空港からの国際線は訪日観光客が増えているということであり、海外旅行が身近になっていることを示している事例なのかもしれません。
JALのリゾート路線の代名詞ともいえるハワイ便は一時期成田羽田関西中部の4空港からボーイング767による6便だけに落ち込みましたが、その後、コナ便も復活し、機材の大型化もされました。繁忙期には臨時便も運航されるまでに回復され、更にはハワイアン航空との提携により、座席供給量のシェアは未だに1位を維持しています。
国内線では、LCCのジェットスターが誕生し、成田からの便をコードシェアで展開することで、行先が格段と増えて利便性が向上しました。
空港案内はあまり変化がないような気もしますが、羽田空港の案内があるのが大きな違いだと思います。
この20年近くで、提携航空会社も大きく変化しました。提携航空会社のおかげでマイレージも貯めやすくなり、行先も格段と増え、利便性が増していますね。
国際線の時刻表はこれが表紙には最終号の記載がありません。というのも、予定されていなかったからではないでしょうか。アプリの紹介はありますが、時刻表がオンラインに移行することの告知はありません。
2002年の時刻表ではまだまだJALが日本の翼として日本各地から世界各地へとフライトを持っていた時期でした。この頃をピークに地方空港からの国際線は減退し、主要空港へ集約されているのが見ていてわかりますね。かつて日本と世界を自社でつないでいたほどの栄華はないものの、ANAは路線の拡大を追う形でしたが、JALは路線の増減が激しいようです。
ANAとともにもう少し地方空港からも海外へ飛んでほしいですが、やはり採算の問題から厳しいのでしょうかね。。。地方から海外に行くには海外の航空会社に頼らざるを得ませんね。